
観葉植物を多数所有する夫婦と子供1人のためのマンション住戸の改修である。















三鷹の家
観葉植物を多数所有する夫婦と子供1人のためのマンション住戸の改修である。
既存マンションはかつてこの土地を流れていた川に平行に構えており、東西南北に区画整理された周辺の建物に対して斜を向いて建っている。そのため、周辺との見合いをさほど気にすることなく抜けを確保することが可能だった。
また、バルコニーレスのフルハイトサッシや低層住宅に面する出窓から差し込む自然光は、時間によって移り変わる光に満ちた浮遊感ある住空間を設計者に想像させてくれた。
この改修は、多様な光が入り込む3面開口と住人の個性を掛け合わせた暮らしを模索した仕事となった。
具体的には、住戸の中央を長手方向に走る曲面壁を挿入し、空間のプロポーションによって定義された様々な居場所がゆるやかに連続するワンルーム空間(=ドマ)をつくり、曲面壁の内部には水回りや寝室などのプライベート空間を配置した。さらにキッチンを含む木造作を出窓面にリニアに配置することで、長手方向に3つの領域が並列する構成としている。
このことにより、ドマは将来的な家族形態の変化にも対応できる余白を包含し、植物がインテリアに入り込む余地を生みだした。
各所の仕上げは、水やりや鉢の移動を考慮したリノリウムの床材、珪藻土を練り込んだ壁の左官、ラワンの造作で構成し、有機的なムラを持つマテリアルで統一した。色調はトーンを抑えたニュアンスカラーとし、光の機微を繊細に拾うことを意図している。
ドマの端部はガラスの建具で間仕切り、サンルームとして使っている。いずれ子供が大きくなればサンルームは子供部屋となり、植物はワンルームの中へ移動することになるだろう。
子供の成長に合わせて植物たちもドマの中を遷移し、その時々で移り変わる暮らしが展開されることを期待している。
三鷹の家
設計:髙橋洸太/KTdr
施工:ルーヴィス
撮影:中村晃
既存住戸は共用廊下側とバルコニー側の計3室にダイニングが挟まれた、ごく一般的な3DKだった。間取りを成立させる躯体は最小限の間口、階高で構成され、躯体と間取りのギャップにより角部屋のポテンシャルを活かせない状況にあった。


解体後の状況。
個室で分断されていた住戸に柔らかい光が入り込み、都市空間の中に浮かぶような独特の浮遊感を感じた。思い浮かべていた空間構成が確信に変わった瞬間。

上:竣工(2025年2月)当時。子供が小さい間は植物はサンルームに集約して管理している。
下:X年後。サンルームを子供部屋として使う。植物たちはドマの中に分散して配置し、グリーンと一体となったインテリアとすることが可能。
