スケールと配列について

日本建築家協会城東地域会による設計競技の応募案。本設計競技は、一級建築士試験合格者を対象に、「一級建築士製図試験を独自の案で解き直す」というものである。

一級建築士の試験では、最大ボリュームを平面的に機能ごとのゾーニングをしていくプロセスで計画される。これは例えるなら、本をジャンルごとにまとめて本棚に詰めていくことで、合理的にまとまりを整理する作業といえる。

対して今回の提案では、本を「背の順」に配列することを考えた。これにより、エッセイの隣に建築の本が並ぶように、機能ごとの固いゾーニングを解きほぐすことを試みた。

敷地は東面で前面道路に接しており、北面には美術館本館、西面と南面には公園が広がっている。そこで、前面道路から西、南、北へと拡張していくスケールの補助線を引き、各スケールに適合した室を「配列」していった。結果、カフェへ向かうコリドーを通りながら多目的展示室が垣間見えたり、公園の眺望を享受しつつ直射光から守られた奥まり感のある展示空間が生まれるなど、室同士、あるいは環境とのつながりに緩やかな関係性が生まれている。

建築はt300mm のフラットスラブとφ220mm の柱で構成されている。主要な鉛直荷重と水平力はコア廻りの耐力壁に負担させ、柱は水平力を負担しない部材とすることで、繊細なプロポーションが公園の樹木に溶け込む意匠となるよう意図した。