Void House

スロベニア セチョヴリエサリナ自然公園の塩田にはかつて100軒以上の農夫たちの家が存在したが、約50年前に製塩が放棄されて以来、現在では約70の遺跡だけが遺る。

某コンペにおいて、CLT(Cross Laminated Timber)を活用して塩田のとある家の廃墟を再生し、この土地における文化遺産保護の空間モデルの提案が求められた。

提案は、CLTの量塊によって地域の典型的な家形を復元し、その内部をギャラリーとして開放するものである。CLTは加工が容易であり、またRCと比較して重量が軽く塩田という軟弱な地盤に適していると考えられる。通常面材として用いられるCLTを、木板を積層した建材であるという特徴に着目し、マッスな物体としてその内部を穿った。

ギャラリーはある瞬間のかたちを切り取られた洞窟のような空間を湛えている。

構成と構法

CLTのマッスで家形のボリュームを作り、そこから遺跡の壁面の外形線をロフトしてできたボリュームをCNCルーターで削り取ることでヴォイドをつくりだす。CLTボリュームは石壁との間に適切なクリアランスが取られており、遺跡に荷重を負担することなく基礎に荷重を伝えている。