Glass-Landfill

第27回ユニオン造形デザイン賞の応募案である。課題は「古さの戦略」。
この課題に応えるには、まず「古さ」(=oldness)とは何かを考える必要があった。さらに、建築を設計して提案するわけであるから、「空間がこの先の未来でどう古さを獲得していくか」という視点が必要である。
古い(old)ものであることと過去のもの(past)であることは必ずしも一致しない。一様な時間の経過の中でも、その時間の質によって、物体が獲得する「古さ」は様々である。
私たちはそういった時間の質のひとつを自然現象と捉えた。石や樹木に「古さ」を感じるとき、単に時間が経過した事実ではなく、そこに刻まれた自然現象の痕跡に「古さ」を感じ取るのではないだろうか。
私たちは、「古さとは、自然の複雑な作用そのものである」と考え、自然の作用を助長する建築を作る、という提案をした。
【物理的現象を建築化する】
敷地は中央防波堤最終処分場、約230ha、海抜30mのごみの埋立地であり、首都の都市活動の終着点である。広大なスケールに埋め込まれた、地質、生物、気候、文化といった多様で複雑な関係にある膨大な情報を、そのまま物理的現象=自然の作用として建築化する。
【埋立地にガラスを架ける】
広大な埋立地にガラスを架ける。ガラスの薄い部分では太陽光のもとに多くの植生が発生し、微生物の活動が活発になることで地盤が安定化する。一方でガラスの厚い部分では外部よりも薄暗く、ひんやりとした洞窟のような環境が生まれる。
この場所において「古さ」の獲得に人間のエゴイズムは存在しない。この土地が本来持つ環境の微差とその作用をガラスが助長し、様々な質の空間が多焦点的に生まれては消えていくのみである。
共同制作:釜谷潤